ケガや病気で入院していた高齢者は、退院後に様々な障害と戦わなければいけないことが多い。うつ病もその1つだ。仕事を引退した高齢者は、社会との関わりが少なくなり、孤立することもある。それに加えて、子どもの自立や配偶者や友人を亡くして、家庭でも1人になってしまう場合もある。
特に退院後は体力が十分に回復しておらず、外に出歩くことも億劫になり、人と会う機会がさらに減る。また、いつ再発するのかという恐怖心や医療費に関する不安、入院生活へのコンプレックスなども精神的な負担になってしまうのだ。このような、高齢者特有の原因で発症するうつ病を「老人性うつ」と呼ぶ。
老人性うつを改善するには、家族をはじめとした周りの人間のサポートが不可欠になる。孤独感が一番の原因であるが、高齢者の多くは迷惑になることを恐れて自分から周りの人間に声をかけることができない。自己肯定感が著しく下がってしまっているうつ病患者となればなおさらだ。
そして、周りの人間からすると「自分が話しかけたらうっとうしがられないか」「1人でいるほうが好きなのだろう」という考えが先行し、高齢者には話しかけづらい。こうして2者間の溝が深まってしまうのだ。
常に人間に囲まれていることを嫌がる人はいるが、家族や友人とたまに軽い交流することにも抵抗がある高齢者は極めて稀だ。老人性うつ病が原因で自ら命を絶ってしまう高齢者も多い。手遅れになって後悔する前に、正しい対策を取っておくことが大切だ。老人性うつは、退院後の介護サービスの利用によって予防や進行緩和が図れることもある。